「いてぇ! 殴んじゃねーよ! しかも客なんていねーじゃん!」
「うっさいわね! 車動かすか、帰るかどっちか選びな! あら、李花ちゃんはゆっくりしていってねー。お客様から苺のタルトもらったのよ。今、お茶入れるわ」
「はい、ママさん。李花もお手伝いします。パパさんも、こんにちわ」
オヤジは黙って手をあげた。
「ったく、ふざけんな。これが一人息子に対する扱いかよ……」
車をコインパーキングに移動するために俺だけ店から締め出された。
客なんて一日に何人かしか来ないようなおんぼろクリーニング店だ。店の外装も俺がガキの頃から変化ない。



