────女に踵落しくらったのは生まれて初めてだった。


「大丈夫ですか? 所長代理。腫れてますよ」


 佐藤ちゃんが、俺の後頭部に豚のマークのアイストンをのっけてくれた。


「これ労災おりるかな? 佐藤ちゃん」

「通院するほどの怪我ではないので労働者災害保障保険適用外となります。

 所長代理、名字への"ちゃん"づけはセクハラと判断してもよろしいでしょうか?」


「ははは……」


 最近、佐藤ちゃんの俺に対する態度がアイツに対する態度に似てきた気がする。

 同類扱いされんのは不本意だけど、何か反論して勝てる相手じゃない。


「藍莉は?」


「彼女なら、一階の応接室にご案内いたしました。この所長室と販売促進部のあるフロアーは原則、トリックスターズの社員か所長の許可がおりたお客様でないと入室できません。

 以降、気をつけてください。真部所長代理」



「はい、すみません……」