────緊張するな。
ネクタイを締め直して、李花の家のインターホンを押す。
李花には、今から会いに行くとメールしたけど返事はなかった。
ピンポーン……
李花いるかな?
広い庭の先にあるデカい家を覗き込む。オレンジ色のレンガ造りの家に俺は入れてもらったことがない。
『はい、どちら様でしょうか?』
男の声がインターホンから聞こえた。
「真部淳一です」
インターホンは沈黙した。
この家の男って……李花の父親しかいない。相手は、あの武尊之銀行頭取だ。
『何しにきた、詐欺師』
だよな……。俺、とことん怪しまれてる。



