ユカリさんは手際良くUSBを差し込み、データファイルを読み込んだ。やっぱ頼りになる人だと思った。
パソコンのデスクトップがメルヘンチックなモップちゃんの動くイラストだったことは、この際見なかったことにしよう……
「見て、淳一くん。これは今後のトリックスターズの運営のプランニングが細かく書いてある」
「運営のプランニング?」
「そう、どんな商品をどれだけのコストで商品化するかとか、どれだけの売り上げを出せば赤字にならないかとか……細かいわね。紙にプリントしたら五百ページくらいになる。約半年分の計画書よ」
「アイツ、ほんといつの間にこんなもん用意してたんだ?」
まるで、自分が捕まるのを前から知っていたみたいだ。しかもこの計画書には、“びっくりっぷ”のことが何も書いてない。
ってことは、“びっくりっぷ”はトミックカラーズにパクられるのもあらかじめ知っていたのか?
「ユカリさん、“びっくりっぷ”が今月の主力商品じゃないんですか? また損失がでるじゃないですか!」
「“びっくりっぷ”は生産前に善太郎が独断で生産中止したわ。だから生産費用は、まだ一円もかかってないわよ? それがどうしたの?」



