「だから警官たちがビクビクしてたんすか?」
「そうよ、善太郎は物凄く強いもの。日本人が世界チャンピオンになるなんて初めてだったし、大騒ぎよ。実業団から『プロにならないか?』って色んな団体から声がかかってたのに『だって俺、女にモテたかっただけだし』って言ってフェンシグ辞めちゃったのよ」
「なんか、その話……テレビで騒がれてませんでしたか?」
「すっごい騒ぎだったわよ。あのルックスでしょ? その適当さがいい! って逆に騒がれて、善太郎が当時一人暮らししてたマンションの周りには、女の子が溢れかえってたもの」
ああ、知ってる。うちのお袋も騒いでた。
『最強の適当王子』とか言われて一躍時の人になってたよな。
アイツだったのか!
「でも、その後も腕前は落ちてないはずよ。新入社員の面接で、頭の上にリンゴのせて見事にリンゴだけ串刺しにしてたもの」
「何をやってるんすかアイツは……」



