ユカリさんがゼンの肩を叩く。


「どういう経緯なのか、はっきりさせとかないと分かんないだろ!」

「嘘よ、絶対上海蟹食べたかっただけよ!」



 それは否定できないな。ユカリさん、可哀想に……


 俺も可哀想だけど。




「徳田様、料理が出来上がったとシェフから連絡がありました」


「お、はやいな。サンキュー」


 俺たちに話かけてきたのは、さっき出迎えてくれた初老の男だ。



「それから、たった今こちらの手紙を預かりました」



「手紙? 誰からだろう」



「それが……申しわけございません。お名前を訊ねたのですが、答えてくれませんでした。もし、受け取りを拒否されるのでしたら我々管理会社のほうで責任を持ってお預かりさせていただきます」



 ゼンは手紙を受け取る。


「ごくろうさん。手紙は確かに受け取った。ユカリ、淳一、部屋に行くぞ」



「いいのかよ! 爆発物とか、変なの入ってるかもしれないだろ?」


「大丈夫だ。行こう」