────ここ、いつ来ても圧巻だよな。ベンツはゼンの自宅、七本木ヒルズ・レジデンスに到着した。


 俺は七本木ヒルズの駐車場までしか入ったことがない(で、藍莉に誘拐された)。

 噂によると、この七本木ヒルズは賃料百万を超える部屋ばかりらしい。
 
 ずーんとそびえ立つマンションに、ゼンはクーラーボックス担いで入っていく。



「俺の部屋、男子禁制なんだけど」


「はあ? 俺に帰れっていうのかよ! あ、違うか……李花に謝りにいかねーと」


「まあ、ちょっとなら入れてやるよ」



 ゼンはタキシードからカードキーを出すと、それをスライドさせる。 

 自動ドアが開く。さっきいたホテルヲータクばりの豪華なロビーにちょっと興味があった。この時間じゃ、もう遅いし。李花は明日にしよう。


 コイツのペースにのまれて、いつも自分が何をしてたか忘れちまう。