「というのは?」
ゼンが惚けたふりして首を傾げた。
予め決められていた企画を、真理子さんは商品化したってことか?
ってことは、ゼンが言うように“ドッキリッパコ”は藍莉が持ち帰る前に商品化が決まってたってことか?
俺もずずっと前に顔を出すと、ゼンに足を踏まれた。
「いてぇ」
「ドッキリッパコの発案者は誰なのかわからないわ。ただ、企画部は香月ホールディングス本社にあるのよ。私たちは商品化とか販売戦略を考えるだけ……よく考えたら島流しみたいなものね」
真理子さんがグッと涙ぐむと、ゼンはその肩に手を回して俺に「どっか行ってろ」と手でシッシッと払いのけた。
ムカついたけど、頭の中はハテナマークで溢れてた。俺はその場に留まり、美味いチーズを口の中に入れて、ワインを一口飲んだ。
ゼンと真理子さんが夜のテラスに消えていく。
「……、ってまた違う女に手出してんのかよ」
確かに真理子さんは、ユカリさん系の綺麗なお姉さんだ。ゼンのタイプだよな。
ユカリさん可哀想だな、なんであんな奴がいいんだろう。
一人でいると「一緒に飲みません?」と女に声をかけられた。「待ち合わせしてます」と答えると「会場内で待ち合わせなんて可笑しい」と笑われた。
くそっ、ゼンの奴、俺を一人にするなよ! 庶民が困ってるぞ!
でも、とりあえず2780万の損失が俺一人の責任じゃないってことが言いたかったのか?
回りくどいやり方すんじゃねーよ。



