通りかかりのボーイが、しゃれた器に入ったチーズを笑顔で配っていた。

「どうも」と言って自分の分だけ受け取ると、ゼンは真理子さんの分も絶妙に受け取る。それを何食わぬ顔で彼女に渡した。


 だよな。こういう場合は相手の分もキープするんだな。気をつけよう。


 次はない気もするけど。


「香月グループがまさか手品グッズ業界に手を出すとは思いませんでしたが、流石ですね」


「そうね。私たち社員もまさかよ。辞令が出て辞めた子もいるんだから」



「でも、真理子さんはその逆境に打ち勝ってこうしてヒット商品をだせたわけですね。尊敬しますよ」

 
 男前野郎が目を細めた。それは最大の武器になる。
 真理子さんの、顔を真っ赤に染めげた。


「やだ、私は言われた商品を形にして売り出しただけよ」