ワイングラスを人差し指と親指で摘み、優雅な笑みを浮かべたゼンについて行く。

 すると、一人の女の人が俺たちに近寄ってきた。


「まあ、すごいイケメンがいると思ったら、やっぱりゼンさん! 本当に来てくれたのね」


「もちろんですよ、真理子さん。彼は会社の後輩、真部淳一です」


 華やかな赤いドレスを着た真理子さんと呼ばれた女。


「はじめまして、二人とも目立つわね。モデルさんみたいよ」
  
 俺は軽く会釈した。せっかく誉めてくれたんだ。話すと馬鹿がバレる。

 ゼンは「そんなことないですよ」と謙遜しながら、彼女の手の甲にキスをする。

 すると真理子さんは悶絶しながら「きゃあ! どうしてそんなこと普通にできるの?」とか「いつもこうやって女だましてるんっでしょう?」とか騒いで、ゼンは涼しい顔してそれをやんわりと受け答えている。


「ところで、野暮な質問ですがドッキリッパコの売れ行きはどうですか?」


「そうよね、気になるわよね。売れ行きは予想以上よ。婚活がいいキーワードになったみたい」



 俺は黙って二人の会話に耳を傾けた。