「マリナ」

「………ん? 何?」

「…………いや。なんでもない。満月が終わるまでは、気を抜くなよ?」

「はーい」

あたしはそう返事をして、
家の中に入った。







玄関で立ちすくんでいる
お父さんに
お母さんが声をかけ、
何かを話している。




「おかえりなさい」

「……………」

「あなた?」

「マリナから、微かだが…サタン
の臭いがする」

「………そう…ね。こんな時間か
ら、狩りでもしてきたのかしら?」

「………サタンを狩った臭いとは
また違う臭いがしてる気がするん
だが…」

「気のせいじゃありません?」

「気のせいだといいんだが…」

そんな会話をしていることなど
あたしは、
知る由もなかった―…。