「せっかくの朝飯が冷めてしまった」

 キッチンに戻ったデイトリアはぼそりと残念そうにつぶやく。

「あっ! しまった仕事!?」

 壁の時計はすでに十時を示していた。

 勇介は大急ぎで準備をすると、テーブルのおかずをほおばった。

「ひってひはふ!」

「今のはいってきますと言いたかったのか」

 あわただしく出て行った勇介の背中を見送り眉をひそめた。

 会社への道のり、勇介は自分の置かれている立場に改めて恐怖を感じていた。

 同じ人間にも狙われるという事実は衝撃的だ。

 色んな人間がいるという事を、こんな事で理解しなくてはならない。

 それが勇介には少し切なく思えた。