しかし、この世界の者が魔王となれば、

「魔物が一気にこの世界に──?」

 ごくりと生唾を呑み込んだ。

「負の力とは心の負の部分も意味する。恐怖や憎悪が奴らへの糧となる。力を持たない者が恐怖するのは仕方のない事だが、それが魔物のエネルギーに置き換えられる事は避けたい」

 ようやく自分の立場がどれほど重要なのかを実感した勇介は言葉もなくデイトリアを見つめた。

 エルミもデイトリアも人間ではないのに、この世界を救おうとしている。

 俺は正直、人間という存在が本当に良いのか解らない時がある。

 良い人もいれば悪い人もいるっていうのは解るけど、二人がそこまでして守ってくれるというのは、どうしてだか不思議に思えた。

 勇介の心は複雑だった。