「その減らず口さえなきゃオレの好みなんだが」

「お前に好かれたいとは思わん」

 しれっと言い放ち、勇介は思わず吹き出しかけた。

「そんなに死にたいか」

 さすがのルーインも軽くあしらわれた事に怒りをあらわにした。

「やってみるかね」

 応えたデイの表情に勇介は息を呑んだ。相手を挑発するその微笑みは恐ろしいほどに美しい。

 その横顔にルーインも魅入られたように動かなかった。

 デイトリアから放たれる存在感は妖艶でいて攻撃的な何かをにじませて絡みつくように部屋に充満する。

 ふいに、外から車のクラクションが聞こえて貼り付けた空気を切り裂いた──外は渋滞の一歩手前にさしかかる時刻になろとしていた。

「デイトリアス、いずれまた会おう」

 ルーインはデイトリアを睨み付け、ゆっくりと消えていった。