「でも──っ」

 応えようとした刹那、デイトリアの顔が険しくなっている事に気がついて声を詰まらせた。

 その途端、部屋にただならぬ気配が漂い、見覚えのある姿がデイトリアの背後に現れて勇介は息を呑んだ。

「……ルーイン」

 ゾッとする笑みを浮かべて立っている。

「覚えていてくれたか、我らが王よ」

 覚えたくなくても消し去る事のできない冷たい瞳は、見ているだけで冷や汗が流れた。

「そいつが今の護り手か。ふ……ん。なかなか隙の無い奴だな」

「ルーインか。代理があまり魔界を抜け出すものではない」

 上半身だけをひねり、男を見上げる。

 さすがの余裕とも言いたいが、余裕をかましているだけかもしれない。