「どうしようもないじゃないか! 正直揺らいださ! エルミが俺のものになるって聞いて。だけど、俺が魔王になったって、彼女が本当に俺のものになるはずがないんだ。エルミは俺の、敵になってしまうんだから」

 それ以上の言葉は出なかった。

 震える手を強く握って抑えようとするが、高揚した感情は全身から汗をにじませる。

「それで良い」

「え?」

 まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった勇介は、呆けたようにデイトリアを見やった。

「危険なのは誰にもうち明けていない想いがある事だ。秘めた感情はそれだけで闇の種となり得る」

 奴らがそれを待っているのだとすれば──

「この時間が我々の敵となる」

 鋭い瞳を宙に向けてつぶやいた。