気がつくと、デイトリアの瞳はじっと勇介を捉えていた。

 全てを見透かすような赤い瞳は勇介の心の奥底までえぐるように輝いていて、その視線に耐えきれず目をそらす。

 以前デイトリアが勇介に問いかけた──おまえは誘惑に少しでも揺らがなかったか──その言葉を思い出し、苦い表情を浮かべた。

「心に暗い影を落としてはならない」

「え?」

 ふいに発したデイトリアにおぼろげな目を向ける。