「デイ……」

 真っ直ぐにデイトリアを見つめ、

「愛している」と声が届いた瞬間、全ては終わったのだと告げるように勇介の体は塵のように音もなく散った。

 ──空は青く晴れ渡り、何もかもが嘘だったかの如く爽やかに風が通りすぎる。

 デイトリアは立ち上がり、ゆっくりと見渡したあとキャステルと視線を合わせ互いに小さく頷き、何も言わずに姿を消した。

「デイ!」

 久住は慌てて呼び止めるも、その影はもう二度と現れる気配はなかった。

 気がつけば、エルミの姿も百年前の男の姿もすでにない。

「さあ、これからが大変ですよ」

 キャステルは今後の事を思い、疲れたように溜息を吐いて空を仰いだ。

 一つとなった人類の先に何があるのかはわからない。

 かつてない栄光を胸に、新しい時代を築いていくのだろう。

 それが、悪しきものでなければ良いとテイトリアは願っている。

 そうして彼は、次の世界に旅立つのだ。

「裁きの神」という名の下に──





 END