「ユウ……。ごめんなさい」

「あれが、君の想い人? なるほど、俺じゃ敵いそうにないや」

 アレキサンダーは吊り上がった目で周囲を見回したあと、キャステルに向き直った。

「百年前の事ではすまないことをした。しつこく頼まれるものだから面倒でつい人間界にちょっかいを出してしまった」

「いいえ、構いませんよ。そのおかげで百年前は救われたのですから」

 やはりそうなのかと風貌が判明したことに喜びを感じつつも、その正体までは明かしてくれそうにない事に少なからず心に残るところはあった。

「──っう」

 勇介は自分の命が消えかけている事を感じながらデイトリアの手を握り、柔らかな笑みを浮かべた。

 短い間だったけれど、本当に幸せだったと今までの事を思い起こす。

 まさか自分がこんな結末を迎えるなんて、あの時は想像すらしなかった。

 勇介は力なく震える手に最後の温もりを噛みしめる。