「私がおまえの手を取る事を本当は望んではいまい」

「言っている意味がわからんな」

 低く応え、足と胸の甲冑を外した。

「鎧は重くてかなわん。おまえと戦うのには少し軽くしないとな」

 不適に口角を吊り上げて腰に携えられた剣を見せつけるように手にした。

 デイトリアはそれを見やり、肩まで持ち上げたその右手に剣を出現させる。

 青白い魔王の剣はデイトリアを映し、薄赤い剣を持つデイトリアの瞳はただ静かにガデスを捉えていた。

「勇介」

 お前の真意を現実にするためには倒さねばならん。

 だが、本当にそれでいいのか。

「デイトリア」

 俺を倒せ、デイ……。

 俺は本気で闘う。手加減すれば死ぬのは君だ。

 今更、後悔はない。

 ──生ぬるい風が微かな音を立てた刹那、互いの剣がぶつかり合い、金属のこすれる音が闘いの開始を告げた。