「すみません。我々はあなたに頼るしか」

「謝る必要はない。こちらにも責任はある」

「デイ!」

「無事でいたか」

 思わず抱きしめた久住に冷静な言葉をかける。

「私は責任を果たさなければならない」

 魔王を見やりつぶやいたデイトリアに久住は眉を寄せた。

「あいつが魔王になったのは何もデイだけの責任じゃ──」

「それでもだ」

 デイトリアとガデスは無言で向かい合う。

「のんびりしていたじゃないか」

 肩をすくめる男にデイトリアはさして反応を見せず、黒い甲冑を一瞥した。

 不思議な金属音を奏でる甲冑は、見たところ人間が知っているそれとは異なる質感をしている。

「まだ真意は明かしてはくれないのか」

「言ったはずだ、人間など見限ったと。今からでも遅くはない、わたしにつけ」

 笑みを浮かべ右手を差し出す。デイトリアはその手をしばらく見下ろし、そして魔王に目を移した。