何の力もなかった人間が、魔王の資質を身につけていたというだけで全てを凌駕する存在となる。

 その恐ろしさをいま、痛いほど実感した。

「まさか忘れている訳ではないでしょう? あなたと戦う相手は私ではない」

「奴が来ると思っているのか? おまえたちで拒絶しておいて勝手な話だ」

 魔王の言葉に霊術士たちは沈黙した。

 自分たちが愚かなのは解っている。

 あの状況では仕方がなかったとはいえ、仲間だと言う事が出来なかった。

 結果的に彼を敵という位置づけにしてしまった。

 その優しさに甘え、必ず助けに来てくれると願っている自分たちをあざ笑いながらも、やはり期待している。

「勝手なのはわかっています。それでも、彼は必ずここに来ます」