「キリがねえな」

 久住は荒い息を整えながら流れる汗を拭う。

 同じくキャステルも疲れた様子で息を吐き出し、久住を一瞥し無言で頷く。

 そして、それでも負けられないと目を吊り上げた。

 そんな、果てしなく続くかと思われた戦いに終止符を打つように現れたのは、張りつめた空気をまとい、重たい気を漂わせて甲冑に身を包んだ黒い影──魔物や魔族とは明らかに異なる存在感を漂わせ霊術士たちを睨みつける。

 ただそれだけで筋肉が萎縮したように指の一本も動かせなくなった。

「立木勇介。否、魔王ガデス」

「キャステル、終わりの時が来た。大人しく地上を明け渡せ」

「まだ終わりではありません」

「おまえの統率力には感服した。だが貴様の力では私とは戦えない。それはよく判っているはずだ。まさか、この期に及んで取り巻きに頼るつもりじゃないだろうな」

 霊術士たちは悔しいながらも、天と地ほどの力の差を噛みしめていた。