「王になればお前の思いのままだ。お前の望むものが手に入る。なんでも自由だ」

 ゆっくりと立ち上がり、勇介に手を差し出した。

 目一杯の優しい口調で語りかけるが勇介にとっては未だ見慣れぬ姿に戸惑いしかない。

 青年の反応が無いと解ると男は尖った耳を小さく動かし口の中で舌打ちした。

「ルーイン! きさまっ」

 空間から突然に現れたエルミは声を荒げて勇介と男の間に割って入る。

 勇介は浮かれている場合じゃないと解っていても、彼女に会えた喜びに口元が緩んでしまう。

「久しぶりだな。相も変わらず美しい。いや、さらに磨きがかかったか」

 エルミの顔はいつになく真剣だ、ルーインと呼んだ男から目を離さない。