「彼がいたならばな」

 キャステルは苦い表情を浮かべ、一人つぶやいた。

 薄暗い室内を照らす数々のロウソクの炎は気流を生む事もなく静かに揺れている。

 それは幻想的とも思える光景だ。

 部屋には椅子や机が無く、白い布だけが敷かれている。

 キャステルはここで床に座し瞑想をしていた。

 キャステルが右手をゆるりと流すと、ロウソクの炎はそれに引っ張られるように同じ方向に傾く。

 これがキャステルの主な鍛錬法だ。

 精神を穏やかに保ち続けることで能力をより強く発揮する。