「きゃあっ!?」

 爆発音と共に風船が割れるように真っ黒な塊が破裂した。

 飛び散った黒いモノが雪の中に染みこみ、じわりと消えていく。

 マリレーヌは目の前で起こった出来事に愕然として体を震わせた。

「うそよ……。ほんの少し舐めただけでギルの許容量を超えるですって? あり得ないわ。私たちは四魔将なのよ。あなた、なんなの──?」

 デイトリアはその問いかけには答えずに、ただ冷たく赤い瞳をマリレーヌに向ける。

 温もりの無い宝石そのままに無表情な彼の視線は、魔物である女にさえも絶望を与えていた。

「裁きの時が来た」

 すらりと伸びた形の良い右腕をしなやかに肩まで上げ、ささやくように紡いだ。

 この時になって、彼女はようやくデイトリアが何者なのかをはっきりと理解した。

 塵に還れ──よく通る声が耳をくすぐる。

 女は恐怖を顔に貼り付けて、なすすべもなく灰のように崩れて風に散っていった。