「ギル!」

 驚いて近づく女よりも早くギルは岩山へと落ちていく。

「おあぁぁっ! がふっ、げぇっ」

 ギルは雪の上をのたうち回り、声にならない叫びを上げる。

 魔物に人間の毒は効かない、ギルが攻撃を受け傷ついた様子もなかった。

「どういうこと? なんなのよこれは!?」

 異様なまでの苦しみにマリレーヌは恐怖を覚えた。

「あなた、何をしたの?」

「私の血は極度に凝縮されたエネルギーだ。人ではない者がわずかでも口にすればそうなる」

「なんですって?」

 無表情に語られた言葉にマリレーヌは目を見開く。

 未だ苦しみに悶える少年の体が徐々に膨らみ始めた。

 血管から血が噴き出し、痙攣が止まらない。

「己の許容を超えたエネルギーを取り込めば、受けきれないエネルギーで体が膨れあがる」

 そうして最後には──