「あれ?」

 仕事場へ戻ると何故か部屋が薄暗かった。

「警備員さんが消しちゃったかな?」

 頭をかきながら蛍光灯のスイッチに足を向けたとき、背後にゾクリとする気配がして立ち止まる。

『王になれば思いのままだぞ』

 低くくぐもった声に振り返ると、そこには口の端を吊り上げてイスに腰掛ける男がいた。

 およそ交渉するという態度には感じられない。

 腰近くまであるオレンジの髪と深い緑の瞳、その存在感で背筋が凍る。

 なんだこいつ──勇介は、人間で言えば二十代ともとれる男にたじろぎつつも気力を振り絞り視線を合わせた。

 緊張の隠せない勇介とは違い、吊り上がった目には余裕が窺える。