勇介は静かな社内のトイレで鏡を見ながら溜息を吐く。

「参ったなぁ」

 大失敗をやらかしたと頭を抱えた。

 すぐ終わると思っていた書類が七時を回っても仕上がる見込みがない。

 どうしよう、もう帰ろうかと足取り重く部屋に戻る。

 彼女の哀しげな瞳が頭から離れない、あれから姿を現してくれないのだ。

 今もどこかで見守ってくれているのだと思うけれど、彼女の顔を見て話がしたい。

 何百年も想い続けている相手から、彼女の心を奪えるとは思えないけれど。