デイトリアは二人のやり取りを眺めて男を一瞥したあと、キャステルに視線を合わせた。

「後は頼む」

「行くのですか」

「ここに留まる事を人々は許してはくれまい」

「私は君を信じていますよ」

「お、俺も!」

 そんな二人に笑みを見せてデイトリアはきびすを返す。

「聞こえているんだろう! 貴様は我々の──」

「お前の国の戯れ言につき合ってやるほど私は暇ではない」

 デイトリアは肩を掴んできた男に赤い瞳を鋭く向けた。

「なんだと!? 貴様、抵抗する気か!」

 語気を荒げる男に反応するように兵士たちは一斉に銃を構える。

 しかし、デイトリアはそれにさしたる反応も示さずその場で姿を消した。