そんな青年に男は鼻で笑った。

 焦げ茶色の短髪にオリーブ色の瞳は力を誇示するように細く開き、その表情からは相手に対する敬意の一片すらも垣間見る事は出来ない。

 三十代後半と思われるその男はデイトリアの前に立ち、頭一つ分ほどの身長差から威圧的に見下ろす。

「君のことはずっと監視していた。なるほど、確かに魔王が欲する程の力を持っているようだ。見た目も実に興味深い」

 言い放ち、デイトリアを下から上までじっくりと舐め回すように見やった。

 当然、久住はそんな視線に怒りを覚える。

「てめっ──」

「久住!」

「キャステル、でも!」

 殴り飛ばしたい気持ちを制止され拳を振るわせる。

 ここで闘いになったとしても自分たちに問題はないが相手が武器を持っている以上、流れ弾が一般人に当たる可能性がある。