「これはどういうことだ」

 この展開を把握していなかったキャステルは眉を寄せ、何者なのかと思考を巡らせた。

 そうして、兵士やヘリに付けられている見覚えのある国旗に目が留まる。

「その男は我が国の監視下に置く。余計な手出しは無用だ」

 指揮官らしい男がゆっくりした足取りで歩み寄り、居丈高(いたけだか)に発した。

 堀の深い顔立ちにその瞳は見下した視線でキャステルたちに睨みを利かせる。

 無政府状態といってもいい現状では、他国の勢力が乗り込んできていてもおかしくはない。

 独裁的な軍事国家のみが未だ国としての体裁を保っているのは皮肉な話だ。

 とはいえ、魔物たちが本格的に侵攻を始めればひとたまりもないだろう。

「なんだおまえら?」

「よしなさい」

 身を乗り出す久住をキャステルが制止する。