──破壊された街の一角。

 かつてはビルだったであろう砕けたコンクリートの残骸がそのなごりを残している。

 恐怖で声もなく寄り添い合っている人々の中心に二人の魔物は立っていた。

 そして、その人々を囲むように大勢の魔物たちがぐるりと取り巻いている。

「来ると思う?」

 マリレーヌは眉を寄せてファリスに尋ねた。

「なんだ、信じてないのかい?」

「当たり前よ。誰だって自分が一番可愛いのに、わざわざ他人のために来る訳が無いわ」

「君はもう少し人間について学んだ方がいいよ」

「あら、失礼ねぇ。こんな弱い生き物のことなんて学んだって仕方ないじゃないの。人間だって特殊な趣味でない限り蟻のことを学ばないのと同じよ」

 踏みつぶせばすぐに死んでしまうじゃない。