「そう、そんなに痛いのが好きなの」

 相変わらずデイトリアの飄々とした振る舞いに馬鹿なのかと思わずにはいられない。

 断ればどうなるかなど解り切っているはずだ。

「せっかくの綺麗な体に傷をつけたいのね」

 隠していた本性をむき出しにするように、吊り上がった瞳に狂気が宿っていく。

 魔王の命令だと思えばこそ、傷つけないでいてあげたのにと尖った爪を見せつける。

「ゲ、なんだこいつ。女王様タイプ?」

「意外と呑気だな」

「いや、もうこうなりゃどうにでもなれって感じ?」

 周り中が敵だらけで笑うしかない。

 間近にいる互いの声も聞き取りづらいほどに魔物たちの声や足音が大きくなっていく。

「ふふ、殺してあげる」

 マリレーヌの声が合図となり、魔物たちが一斉に雄叫びを上げて迫ってきた。