「すべき事をしているだけだ。無駄な事などありはしない」

 揺るぎのない瞳はガデスの喉を詰まらせる。

「久住、教えてやろう」

 魔王は大きく息を吸い込み、切り替えて男に発した。

「デイトリアはもはや人ではない、そんなものは過去の話だ。人間の振りをしているが性別も無く、老いることも無い」

「は? お前なに馬鹿なこと言ってんだ」

 鼻で笑うが、本人からの否定の声が聞こえない。

 久住は、自分が聞こえなかっただけなんだろうと思いたかった。

「デイ……?」

 振り返ると、何事もないように無表情に立つデイトリアがいた。

 どうして否定しない? なんで黙ったままなんだよ──!?

「本当なのか?」

 嘘だと言ってくれ。頼む──デイ!

「そうだ」

「嘘だ!」

 久住の激しい動揺にガデスは薄ら笑いを浮かべた。