「デイトリアちゃん、大人しくしなさいな。そうすれば痛い思いしなくて済むんだからさぁ」

 久住は以前にも感じた違和感に眉を寄せた。

 こいつもデイトリアと言った。

 やっぱりこの前のは聞き間違いじゃなかったんだ。

 その時、威圧感を漂わせる幻影がゆっくりと二人の前に現れた。

 魔物たちは幻影であるにもかかわらずひざまづき、それが彼らにとって畏怖する存在なのだと示す。

 影は閉じていた瞼をゆっくりと開くとデイトリアを見つめた。

 デイトリアはその視線にたじろぎもせず魔王と見合う。

「デイトリア。人間たちが君の正体を知っても、君を守ると信じているのかい?」

「守られるためにいるのではない」

「君が人間だと思っているから守っているんじゃないのか? 無駄なことはやめておけ」