魔物たちの侵攻は霊術士たちの想像通り、人々に恐怖を与えるに至った。

 この混乱を収めるに足る者などいるはずもなく、力なき人々はただ神に祈り、すがる事しか出来なかった。

 そうして、「人」でいようとする者たちと「魔物に魂を売る」者たちとが互いに激しく争い分裂が始まる。

 生きるための選択といえば聞こえはいい。

 しかし、それが正しいかどうかという部分までを考えられる者は少ないのかもしれない。

 人であり続けるためにはその命を賭けなければならない。

 だからといって魔物に服従すれば、命は長らえる代わりに人としてのあらゆるものが奪われる事になる。

 世界は今までに経験した事のない戦いに呑み込まれ、死と絶望と叫びを作りだしていく。

 街はことごとく破壊され、誰を信じればいいのか解らない。

 恐怖は力なき人々を服従させ、魔物たちの力を強力にする。

 そうした人々を護りながらの戦いは、霊術士たちの心身を徐々に疲弊させていった。