──魔王の城はいつになく静まり返っていた。

 玉座のガデスの前には三人の魔将とルーインがひざまずき、何かを待っているようだった。

 ガデスはそれを確認するように部屋を見回すと、銀色の鎧をきしませながら立ち上がり悠々と右手を掲げる。

「時は満ちた、今こそ人間界に侵攻せよ! 彼らに恐怖と殺戮を──!」

 その声は魔界の隅々まで響き渡り、魔物たちは一斉に雄叫びをあげた。

 それはまるで魔界全体が震えたようだった。

「やっと動いた。いつまで待たせるのかとイライラしてたよ」

 ギルは溜息を混じらせて肩をすくめる。