会議を終え、車に乗り込む組織の代表者たちを見送りながらキャステルはデイトリアに振り返る。

「とりあえず君の元には久住を置いておきます。後でもう一人よこしますのでよろしくお願いします」

「良いのか。奴は──」

「ええ、もちろんですよ。彼はあなたに好意を抱いているがその分、あなたにはやりにくい相手でしょう?」

 その好意を利用して御しやすくする事も可能かもしれないが久住は不器用で純粋だ。

「あしらい難い相手ではある」

「君が魔王に誘惑される理由が解るよ」

 眉を寄せ久住を見やるデイトリアに笑みをこぼして普段の口調で応えた。

「どういう意味だ」

「君はとても美人だから」

 さらに眉間のしわを深くしたデイトリアから逃げるように車の後部座席に乗ると、手を軽く揚げて車は遠ざかる。