「名前を教えて」

「え?」

「あなたの名前よ」

 そういえば名乗った覚えがなかった。

「ああ、立木 勇介(たちき ゆうすけ)。呼び方はなんでもいいよ」

 目も耳も、すっかり人間のソレに戻った彼女はゆっくりと勇介を見つめた。

「じゃあユウ、私のことはエルミでいい。時間は無いと言ったけど、まだ少しは残ってるわ」

「本当に?」

 彼女をリビングのソファーに促し、コーヒーを入れるためキッチンへと足を向けた。

「奴らは大陽の下では生きられない。闇夜が彼らの世界なの。そう考えると少しは楽でしょ?」

「ということは仕事は辞めないですむ訳か。そりゃありがたい」

 コーヒーカップを二つテーブルに並べて彼女の向かいのソファーへ腰を落とした。