『何も聞かないのかい? せっかく話が出来るのに。君の声が聞きたいよ』

「勇介──いや、ガデス。私に何か用でもあるのか」

『随分と冷たい言い方をするんだね。まあ、デイらしいと言えばデイらしい。別れ際にも言っただろう? 君に求めるものは一つしかない』

「魔王側につけか。生憎と私は融通がきかなくてね」

『デイならそういうと思っていたよ。でもね、諦める訳にはいかないんだ。人間側につく君が許せないから、どんなことをしても君をわたしの配下に置くよ』

「お前の真意を知る事は適わないのか」

 その問いかけにしばらく返事はなかった。返答を思案しているのか、それとも返す気がないのか。

『君に話したことが全て真実だよ』

 しばらくの沈黙のあと、低く発して気配は消え去った。