──その城は、暗く重たい空を背に悠然とそびえていた。

 そこに輝きなどはまるでなく、心を沈ませるどんよりした風が吹き抜けている。

 おおよそ人が訪れる事はないであろう魔界のその中心に魔王の城はある。

 恐怖を掻き立てる石像がエントランスに建ち並び、内部の空間は息苦しいほどの威圧感を放っていた。

 シャンデリアは鋭く、訪れた者をことごとく殺めるために今にも降り注ぎそうなほど互いに高い音を鳴らしていた。

 深紅の絨毯が敷かれた通路に飾られている絵画は芸術的だが狂喜を漂わせ、最奥にある王の間には長らく主(あるじ)を待ちわびていた玉座が満足そうにその男を座らせていた。

 ルーインと魔将たちはひざまづき、玉座に腰を落とす男に敬意を払う。