「とにかく、よろしく頼む。事は一刻を争う」

「わかった! 話がついたら携帯に連絡するよ」

 デイトリアは足早に立ち去る久住の背中を見送り、溜息を吐き出して空を見上げる。

 エルミの気持ちも解らんではない。

 だが、どれほど焦がれようともその心は決して奴には通じはしない。

 奴にも私にも、その感情は存在しないのだから──それが解っていながら、おまえは愛し続けるのか。

 恋愛感情はなくとも、人であった過去の感情は未だデイトリアの記憶にある。

 それ故にエルミの想いがいかほどの苦しみかは理解出来る。

 だからこそ、報われない想いを抱える彼女にデイトリアは苦い表情を浮かべるのだ。