「仕事はどうした」

 随分と時間のかかった着替えから戻ってきた勇介に何故、私服なのかと眉を寄せた。

 その刹那、黒い影が二人の前に現れる。

「デイ!」

 エルミは声を荒げてデイトリアに駆け寄った。

 荒い息を整えて勇介とデイトリアを交互に見やり、ホッと胸をなで下ろす。

「どうした」

「人間界の境界線が揺らいでるの。まさかユウが向こうについたんじゃないかと思って急いで来たんだけど」

「何?」

 エルミの言葉に顔をしかめたデイトリアの首にふいに腕が巻き付いた。

 視線を向けると、そこには口の端を吊り上げた勇介の顔が間近に見えた。