戸惑う青年を見つめ、黒の女王エルミと名乗った女は小さく溜息を吐き出すと、ゆっくり街灯の増したに歩みを進めた。

「うっ!?」

 薄明かりに照らされた彼女の姿に青年は思わず後ずさった。

 長く伸びた耳に縦長の瞳孔──彼女から醸し出される雰囲気は人のそれではなかった。

 自分に起きた出来事が現実なのだと思い知らされる。

「解ったでしょう? これが現実よ。時間は無い。あなたの都合など関係無く、奴らはあなたを暗黒の王にするべくやってくる。考える時間は無いのよ」

 そうして、青年の人生は一変した──