そして、勇介の夢は再び悪夢となる──

「おまえの欲しいものはなんだ。力を手に入れればその願いは叶うぞ」

 暗闇からの不気味な声は、低く勇介を誘惑する。

「そんなもの嘘だ!」

 勇介は声から逃げようと必死に足を動かした。

 どこまで走っても広がるのは暗闇ばかり。

 不安が勇介の心を支配していく。

「おまえの望み通りの世界に変えられる」

 しかし、その声は勇介の耳元で聞こえて暗闇から腕が伸びる。

 その青白い腕は逃げる勇介の腕をしっかりと掴んだ。

 それに驚いて振り返り、腕の主に目を見開く。

「ファリス!?」

「そうです、私ですよ我が主(あるじ)。私は夢の中に入り込む力を持っているのです」

 勇介を掴んでいた手を離し、優雅に口を開いた。