きっと、それを口にした所でデイトリアはいつもの静かな口調で「だからどうだというのだ」と答えるに違いない。

 この苛立ちはなんだろう。

 勇介は気づかずにその苛立ちを彼にぶつけていたらしい。

 目の前のソファに腰掛けているデイトリアが眉を寄せた。

「何を怒っている」

「別になにも」

 食事を終えてコーヒーを傾けつつ、ぶっきらぼうに返す。

「エルミの事で怒っているのか」

 なんだ、気にしてたのか。

 勇介はそれに少し安心した。

 遠く感じていた距離が一気に縮まる。

「仕方なかろう、優しく返した処で進展など望めないのだ。奴の性格もよく知っている」

「いや、もういいんだ」

 吹っ切れたような表情を見せた勇介に眉間のしわを深く刻んだ。