魔物たちはデイトリアの強さを認識したのか、あれから姿を現さない。

 諦めた訳ではないだろうが、なんだか不気味でさえある。

 そして、勇介が気付いた事が一つある。

 もしかすると、彼は食べなくてもいいんじゃないだろうか。

 食事でおかわりをしたのを見た事がなく、必ず勇介よりも量が少ない。

 気付いた事が不思議なほどに自然に振る舞っていた。

 勇介はそれを彼に尋ねる事を躊躇った。

 その疑問が真実なら、ますますデイトリアが遠い存在に思えてしまう。

 そう思える事が、どうしてそんなに怖いのかは解らない。

 かつては勇介と同じ、人間の心と肉体を持っていたはずのデイトリアを、もとより人じゃないエルミよりも遠く感じてしまう。