黒くすすけた体がゆっくりと傾いていく。

「ネイル!?」

 倒れた男はぴくりとも動かず、魔物の三人は目の前の光景に信じられない面持ちだった。

「おまえは何者だ。ネイルをこうも易々と倒すなど──っ!?」

 デイトリアはファリスの問いかけにゆっくりと頭をもたげ、美しい笑みを浮かべる。

 その、妖しく冷たい表情に引き込まれそうになる。

 それぞれは頭を振り、その意識から逃れた。

「ちょっと、これってヤバいんじゃないの? 人間だと思って甘く見過ぎていたわ」

「くっ……。少々遊びが過ぎたらしいね」

「デイトリアス、またいつかお目にかかろう」

 悔しさをにじませながら低くつぶやいて姿を消し去る。