「その程度のことで先に疲れるなんてあると思う? あの男は何者なの?」

 皆、一様に動揺を隠しきれない。

「……そんな、バカな」

 全ての剣は受け流され、避けられ、受け止められてネイルは驚愕した。

 自分と相手の体格差は優に倍以上あるというのに、渾身の力を込めた剣がまるで通用しない。

 焦りを見せた男にデイトリアが反撃を掛ける──左から振られた剣を左手で受け止め、その剣を握りしめた。

「っ!?」

 驚くネイルに、口角を吊り上げてささやく。

「その甲冑、お前の力によって全体を護っているな。疲れ切ったおまえに今、護るだけの力はあるか」

 刹那、ネイルの体がまばゆい光に包まれてバリバリという激しい雷のような音と共に魔物の叫び声が広い空間に響き渡った。